Journal archives for July 2020

July 13, 2020

絶滅危惧種の保全状況の登録について

@keitawatanabe , @skycat , @genjitsu , @sable
標記についてご相談させていただいた皆様

いつも同定のほか、様々なご協力をいただきありがとうございます。
iNaturalistでは、IUCNレッドリストのほか、北米を中心に国・州レベルで絶滅危惧種の保全状況が登録されています。これまで日本では環境省レッドリストの掲載状況は登録されてきませんでしたが、最近、日本語名の修正、サイトの日本語翻訳や固有種情報の登録など、皆様に改善をしていただいておりますので、この際、絶滅危惧種情報も登録していければと考え、掲示板や個別でのご相談をさせていただいてきました。
それらの種については、保全状況を登録するとユーザー投稿時の設定にかかわらず位置情報を不明瞭(約20×20kmメッシュ)や非公開とすることが可能となるため(投稿者、iNatスタッフ、プロジェクトの管理者だけがピンポイントの位置をみることが可能)、ジオプライバシーの運用をどうしたらよいかが論点となっていました。

様々なご意見をいただいたのですが、それらを集約したところ、個人的には「保全状況は入力するが、位置情報は一律公開にする」案で進めてはどうかという案に現状落ち着いております。
理由としては、乱獲・盗掘リスクはもちろん重々承知していますが、後述のとおり、サイト全体としてユーザーの自由を制限する運用は最低限に抑えるべきではないかという考えに納得したからです。
また、どの分類群のどのレベルまでを公開制限するかは、日本の各分類群(あるいは種レベル)の詳しいユーザーの間でその都度決めたほうがよいとも考えます。その意味でも、まずはレッドリストの状況だけ登録しておくことが妥当のように思います。

改めて、公開/不明瞭/非公開のそれぞれのメリット・デメリットをまとめてみましたので、お忙しいところ恐縮ですが、補足コメントや意見がありましたらいただけますと幸いです。
また、個別に相談をしていた都合、意見を伺える方が限られていたため、追加でコメントをいただいたほうがよい方がいらっしゃいましたら、@にてお声がけを頂けますと大変有難いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

  • 公開とした場合
    メリット
    ・iNatが市民科学のツールである点をふまえると、「ユーザー自身が希少種を認識して保全について考え、適切な選択をする機会」を担保することが、サイトの趣旨としては正しい選択なのではないか。また、長い目で見ても科学リテラシーを広げることにつながるのではないか。
    ・乱獲や盗掘以外の要因(開発行為や地球温暖化)で希少となっている種については、位置情報を公開可能としておけば保全に活用する機会を提供できる(Curators Guideのジオプライバシーの項も参照)
    デメリット
    ・ユーザーの性善説に委ねなければならないところ。
    ・ユーザー、キュレーターが巡回して、乱獲/盗掘リスクの高い種を公開しているユーザーを個々に注意していく必要がある。

  • 不明瞭とした場合(環境省の「いきものログ」はこれとほぼ同じ運用です)
    メリット
    ・現実的に特定が困難な範囲へ位置情報を不明瞭にできるところ。
    ・非公開と比べて、種同定に支障をきたさないところ。
    デメリット
    ・一律で不明瞭とすることで、詳細な位置情報が研究や保全の実務に生かされる機会を奪うことにつながる。

  • 非公開とした場合
    メリット
    ・乱獲/盗掘リスクの高い種について、生息地をより推測しづらくできる
    デメリット
    ・場所で購読/探索(同定作業)しているユーザーが気が付かなくなる
    ・位置情報を非公開としたとしても、写真の背景などから生息地を推定することは可能であるため、非公開とするメリットは低い
    ・分布情報が研究に生かされる機会を失ってしまう

Posted on July 13, 2020 08:18 PM by utchee utchee | 15 comments | Leave a comment

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